生後2週間。退院してすぐの長男の両足に、白いギプスが巻かれた。

「普通の足に産んであげられなかった」——そう思って、わたしも一緒に泣いた夜があります。
この記事は、生まれつき右足が先天性内反足だった長男の、ギプス・手術・装具治療の記録です。
同じ診断を受けたばかりのママ・パパに、「治療のこの先がどうなるのか」「実際どんな暮らしになるのか」が少しでも見えるように、わが家のリアルを正直に書きます。
※すべて、わが家の一例としての体験です。治療の方針や経過は一人ひとり違います。気になることは必ず主治医に相談してくださいね。
「1000人に1人」と言われた日のこと

長男は、約1000人に1人の確率でおこるとされる先天性内反足という状態で生まれてきました。足首から先が内側に向いてしまう、生まれつきの足の変形です。
生後2週間からギプス治療が始まりました。産前に楽しみにしていた、新生児の沐浴。お家でできたのは数えるほどで、あとは週に1回、病院でささっと沐浴するだけ。赤ちゃんなのにお風呂に毎日入れてあげられないことが、地味に寂しかったのを覚えています。
最初にギプスをつけた日、長男はずっとギャン泣きでした。

その姿を見ながら、「普通の足に産んであげられなかった」という気持ちでわたしも泣きました。
産後2週間健診では、助産師さんと話しながら涙がぽろぽろ。里帰りで母が全面的に支えてくれなければ、心も体も本当に参っていたと思います。
ただ——心配していたのは親ばかりで、赤ちゃんの適応力は本当にすごい。ギプスをつけた翌日には、もう足をぶんぶん振り上げて、すっかり慣れた様子でした。
ギプス12回、そして手術へ

わが家の場合、ギプスでの矯正治療(ポンセッティ法/Ponseti法と呼ばれる方法でした)は週1回の通院で、全部で12回。
毎回、麻酔なしで本来曲がっていない方向に足を少しずつ動かしてから、ギプスを巻き直します。施術のあいだ絶叫して泣く長男を見るのは、毎回つらかった。
ギプスは石膏で、毎回自宅で外してから受診していました。
一度だけ、自分でギプスを抜いてしまう事件も発生(笑)。それでも大きなトラブルなく進められたのは、本人ががんばってくれたからだと思っています。
ギプスのあとは、生後3ヶ月のときにアキレス腱を切る手術がありました。難しい手術ではないと説明を受けていても、低月齢の赤ちゃんの全身麻酔にはそれなりのリスクがあります。
手術当日。我が子を手術室へ見送るときの気持ちは、こんなにも落ち着かないものなのかと、初めて知りました。術前の絶飲食は、低月齢の赤ちゃんにはなかなかハードモード。12時間以上母乳をあげられず、これが地味にこたえました。付き添い入院は、ナースステーション前の病室で会話が気になり、一睡もできず。

術後は5週間ギプス固定で、お風呂は禁止。長い5週間でした。
装具デビュー、そして夜間だけの日々へ


2022年1月、待ちに待った装具デビュー。
デニス・ブラウン装具という、両足を金具のバーでつなぐタイプの装具です。最初は終日の装着から始まりました。
この日を、夫とずっと心待ちにしていました。やっと毎日普通にお風呂に入れてあげられる——それだけで、十分しあわせでした。
特殊な装具なので、暮らしの中で工夫が必要な場面はいろいろあります。それでも、再発を防ぐためには根気が大事と言われていたので、早く慣れてくれるといいなと思いながら過ごしました(最初は慣れず、昼夜問わずギャン泣きでした)。
生後11ヶ月、長男が自分で立つようになってからは、装具は夜間のみの装着に。そこから4歳のお誕生日を迎えるまで、夜間の装具をつけ続けました。
そして現在。通院は半年に1回になりました。

あんなに毎週通っていた日々が、ずっと遠くに感じます。
当事者になって、はじめて分かったこと

看護師として働いていても、いざ我が子の当事者になると、知らなかったことばかりでした。同じ立場になった方の役に立つかもしれないので、わが家が「知っておけてよかった」と感じたことを残しておきます。
装具は、まず全額自費で支払うことがある。
わが家の場合、装具はいったん現金で全額立て替える形でした。金額も小さくありません。あとから福祉医療の制度に本当に助けられました。お住まいの自治体やかかっている病院で、使える制度を早めに確認しておくと安心です(制度の内容は地域で違うので、必ず窓口に確認してくださいね)。
付き添い入院は、想像以上に大変。
親の食事・睡眠・着替えまで、事前に準備しておくとラクです。
術前の絶飲食は、低月齢ほどしんどい。
授乳のタイミングを医療者とよく相談しておくと、当日の見通しが立てやすかったです。
おしゃぶりでなんとかごまかして耐えました。
術前訪問はありがたい。
看護師さんや麻酔科の先生が事前に来てくれると、それだけで安心できました。聞きたいことはメモしておくのがおすすめです。
治療のあいだ、わが家で役に立ったもの・工夫
長いギプス・装具生活のなかで、暮らしを少しラクにしてくれたもの・自分で編み出した工夫があります。

あくまでわが家の場合ですが、同じ治療中の方の参考になればうれしいです。
抱っこ紐は「セパレート式」が圧倒的にラク

装具は両足を金具のバーでつないでいるので、一般的な抱っこ紐はとにかく使いづらい。バーが邪魔で足を入れられないんです。
わが家が激推ししたいのが、ベビービョルンの「ベビーキャリアMINI」。
ショルダーベルトと本体が分かれるセパレート式なので、装具のバーの間を通して抱っこ紐をつけられます。これを知ってから、お出かけのハードルがぐっと下がりました。
バーのカバーには「抱っこ紐用よだれカバー」

装具のバーは、寝ているときに親の顔にあたったり、普段の生活で物にぶつかったりします。わが家では、抱っこ紐の肩紐につける「よだれカバー」をバーに巻いて使っていました。
クッション性があるので当たっても痛くないし、種類が多くてかわいい柄が選べるのもうれしいポイント◎
さらにクッション性をもたせるために100均のベビー用の角クッションカバーを巻くとよかったです。
足の蒸れ対策には「チュビファースト」
ずっと装具をつけていると、足が蒸れて皮膚トラブルにつながることが多かったです。
わが家では、靴下ではなく「チュビファースト」という筒状の包帯を足のサイズに切って履かせていました。通気性がよく、アトピーの治療にも使われるものです。
装具をきつく履かせすぎると、足先の色が悪くなることがあります。チュビファーストは足先があいているので、血色をその場で観察できるのも安心でした。

ロール状で、汚れたり古くなってきたら切るだけで新しいものを使えるのも便利だった!ひとつ買うとしばらくもつ◎
※肌の状態や使い方で合う・合わないがあります。皮膚トラブルが気になるときは、自己判断せず主治医や看護師さんに相談してくださいね。
石膏ギプスを自宅で外すコツ

石膏のギプスは、調整日の前に自宅で外してから受診する必要がありました。これがとにかく大変。
コツは、とにかく湿らせてふやかしてから外すこと。タオルにしたたるくらい水を含ませてギプスに巻き、上からビニール袋をかぶせてできるだけ密封します。周りが濡れないよう、下にペットシートを敷いておくと後片付けがラクでした。
お風呂に入れない期間の「洗髪・清拭」

ギプス中は自宅でお風呂に入れられないので、毎日、洗髪と清拭をしていました。
洗髪は、下にペットシートを敷いて、100均で買ったドレッシングボトルにお湯を入れて流すのがちょうどよかったです。お湯の量と勢いを自分で加減できるので、少ないお湯でもしっかり流せました。
それから、心の支えになったのが「ONE in 1000」という絵本でした。
先天性内反足の男の子が、自分の足と向き合いながら、みんなと同じようにいろいろなことができることを夢見てがんばっていくお話です。世界中に同じように治療をがんばっている子がいると知れて、わたし自身がはげまされました。
転勤族で、4つの病院を転院しました


わが家は転勤族で、これまでに4つの病院を転院してきました。
先天性内反足は特殊な治療が必要なので、問い合わせると「うちでは診られない」と断られる病院もありました。継続的な治療が必要なだけに、「転院先が見つかるのか」「ちゃんと引き継いでもらえるのか」は、毎回いちばんの不安でした。
でも、結果から言うと——心配は無用でした。
全国を転々としているのに、転院先でいつもいい先生に巡りあえました。
なかには、前の病院の先生と新しい病院の先生が知り合いだった、ということも。専門的な治療をしている先生同士は、思っている以上につながっているのかもしれません。おかげで、どの土地でも安心して通うことができました。
もし今、転勤や引っ越しで治療の継続が不安な方がいたら——伝えたいのは、まず受け入れ先の病院に早めに問い合わせておくこと。そして、専門の先生のネットワークは、私たちが思うより広いということです。
同じ診断を受けたばかりのママ・パパへ

診断を聞いた直後は、不安でいっぱいだと思います。わたしもそうでした。
でも、治療は確実に前に進みます。毎週のギプス、手術、終日の装具、夜間だけの装具——ひとつずつ卒業していって、わが家は今、半年に1回の通院まで来ました。
赤ちゃんの適応力は、親が思っているよりずっと強い。そして、つらいときは周りにどんどん頼っていい。わたしは母に、医療者に、家族に、本当に支えられました。
最後にひとつだけ。今いちばん近くで治療を見ているあなたは、もう十分がんばっています。我が子の一番の味方でいられたら、それで十分◎
不安なこと・気になる症状は、ひとりで抱えこまず、必ず主治医に相談してくださいね。


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